個人事業主が知るべき小規模企業共済、20年未満の解約で元本割れは実際いくら?

制度解説

フリーランスにとって小規模企業共済はどんな制度か

フリーランスが退職金制度について検討している様子

会社員であれば、勤務先が退職金として退職時に一括でお金を支払う制度がありますが、フリーランスにはそうした勤務先の退職金制度がありません。

小規模企業共済は、その退職金制度の代わりにフリーランス・個人事業主が自分で準備できる制度として位置づけられます。加入者が毎月掛金を積み立て、廃業や一定年齢で受け取る仕組みです。

掛金は月額1000円から7万円まで自由に選べ、全額が所得控除の対象となります。つまり掛金分だけ課税所得が減り、所得税・住民税の負担が軽くなるという税制メリットがあります。

会社員の場合、勤務先が退職金に相当する額を毎年積み立てるため、本人の負担はありません。一方、フリーランスは自分で全額を負担する必要があり、その代わりに税制優遇を受けるという構図です。

20年未満の解約で元本割れが起きる仕組みとは

小規模企業共済の20年という期間制限について考えている個人事業主

小規模企業共済には、会社員の退職金制度にはない重大な特徴があります。それが任意解約時の元本割れです。

廃業や死亡ではなく、自分の都合で解約する場合、掛金納付月数が240ヶ月(20年)未満なら、納めた掛金より受け取れる金額が少なくなる仕組みになっています。

掛金納付月数ごとの受取率の目安は以下のような形です。1〜11ヶ月は0%(何ももらえない)、12〜23ヶ月で80%台、24〜35ヶ月で90%台という具合に、継続年数が長いほど受取率が上がり、240ヶ月を超えると100%以上になります。

iDeCoや銀行預金は、解約時に納めた金額全額(または利息が付いた額)が返ってきます。その点で、20年未満の解約で確実に元本割れが起きる小規模企業共済は、この制度特有のリスクと言えます。

実際いくら損するのか、元本割れの金額イメージ

掛金330万円の積立シミュレーションを確認する自営業者

具体例で考えてみましょう。月3万円ずつ10年間(120ヶ月)積み立てたケースです。

掛金総額は360万円になります。しかし、120ヶ月(10年)での任意解約であれば、掛金納付月数が240ヶ月に達していないため、受取額は360万円より少なくなります。

中小機構の受取率試算表によれば、120ヶ月時点では受取率がおおむね85%程度のため、受け取れる額は約306万円です。損失額は54万円になる計算です。

同じく月3万円で15年間(180ヶ月)積み立てた場合、掛金総額は540万円で、受取率がおおむね90%程度であれば、受け取れる額は約486万円。損失は54万円程度になります。

ただし、制度改正により受取率は変動する可能性があります。正確な試算は、中小機構の公式サイトで公開されているシミュレーターで確認することをおすすめします。

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見落とされがちな注意点、掛金変更と解約の制約

掛金変更手続きについて資料を確認するフリーランス

小規模企業共済を検討するとき、掛金の柔軟性について注意が必要です。掛金の増減変更は年に1回までで、所定の手続きを経る必要があります。

フリーランスは会社員と異なり、毎月の収入が大きく変動することが少なくありません。今年は売上が多いから掛金を増やす、来年は減らす、といった対応が簡単にできないため、事前に生活資金と貯蓄バランスを慎重に検討する必要があります。

一度加入すると、解約しにくい貯金という性質を持つ制度です。廃業や死亡、または高年齢での解約なら全額以上が返ってきますが、それ以外の任意解約は不利な条件になるためです。

加えて、iDeCoに加入している場合は注意が必要です。小規模企業共済とiDeCoの掛金合計額に上限が設けられている場合があり、両方に加入する際は合計額の管理が求められます。詳しくは加入時に確認することをおすすめします。

どんなフリーランスに向いていて、誰は慎重になるべきか

小規模企業共済とiDeCoの組み合わせ方を検討する女性起業家

小規模企業共済に向いているのは、長期にわたって事業を継続できる見通しがあり、安定した収入が見込める個人事業主です。

また、所得が高いほど所得控除による節税効果が大きくなるため、利益が大きなフリーランスほどメリットを感じやすい制度と言えます。月7万円を掛け金の上限額まで継続できれば、年84万円の所得控除が得られ、税率が30%なら年25万円程度の税負担減になる計算です。

一方、慎重になるべきなのは、5年から10年以内に解約する可能性がある人です。不安定な収入で手元資金が薄い場合、急な出費で解約を迫られれば、元本割れを避けられません。

実際に検討する方からよく聞かれるのが「節税になるなら、とりあえず入っておいて損はない?」という質問です。しかし、解約時に損が出る可能性がある以上、「必要になったら引き出す備金」としては向きません。廃業時または高年齢到達時に受け取る、という前提で加入することが大切です。

小規模企業共済を検討する際の次の一歩

中小機構の相談窓口を訪れて説明を受ける個人事業主

小規模企業共済に加入する場合、中小機構の公式サイトまたは取り扱い金融機関の窓口が入口になります。中小機構から資料請求したり、銀行や保険会社の窓口で相談できます。

節税額の詳しい試算や、廃業時の受取計画などは、税理士に相談することが有効です。あなたの所得水準や今後の事業計画を踏まえて、本当に必要な掛金額がいくらか、20年継続できるか、という判断がしやすくなります。

iDeCoや国民年金基金といった他の資産形成制度と組み合わせる場合は、掛金の上限管理や控除額の重複がないか、全体の戦略として確認する価値があります。フリーランスにとって、長期資産形成の選択肢の一つとして検討してみてください。

よくある質問

Q. 月3万円で10年積立った場合、解約すると実際にいくら損しますか?

A. 掛金総額は360万円ですが、10年(120ヶ月)での任意解約では受取率が約85%程度のため、受け取れる額は約306万円になり、54万円程度の損失が生じます。ただし、中小機構の公式シミュレーターで最新の受取率を確認することをおすすめします。

Q. iDeCoと小規模企業共済の両方に加入できますか?

A. 両方に加入することは可能ですが、掛金の合計額に制限がある場合があります。詳しくは加入時に取り扱い金融機関や中小機構に確認することをおすすめします。

Q. 廃業時と自分の都合での解約で、受け取れる額は変わりますか?

A. 大きく変わります。廃業の場合は納めた掛金の100%以上が返ってきますが、自分の都合での任意解約で20年未満なら元本割れが確定します。解約理由によって受取率が異なるため、事前に確認が重要です。

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