「保険料だけ払って、将来もらえるのか」という個人事業主の不安

毎月、口座から引き落とされる国民年金と国民健康保険の保険料。会社に属していた頃は厚生年金に自動で入っていたのに、なぜか今は不安がつきまとう。そんな経験をされている方も少なくないのではないでしょうか。
フリーランスになってしばらく経つと、ふと気づきます。「同じ年収でも、友人は厚生年金を積み立てていて、私は国民年金……将来、もらえる年金額って大きく違うんじゃないか」と。
その計算をしてみると、さらに不安は深まります。厚生年金では月額15万円前後の受取を期待できるケースが多いのに対し、国民年金だけでは月額6万円程度が一般的な水準と言われています。その差は毎月9万円。定年後の生活が想像できなくなるような、そんな恐怖を感じるのは当然です。
しかも、お金の不安だけではありません。急に病気で動けなくなったら、会社員なら傷病手当金で給料の約3分の2が保障されるのに、フリーランスにはその制度がない。出産だって、会社員の妻なら出産手当金が出るのに、個人事業主の自分には出ない。そうした「もしも」のシナリオが、頭を離れなくなるのです。
会社員の友人には、なぜか話せない

だから、誰かに相談したいのに、そうもいきません。特に会社員の友人には。
フリーランスという道を自分で選んだ手前、「やっぱり社会保険が心配で……」なんて弱音を吐くのは、何だか負けを認めるようで躊躇してしまう。会社員から転身した友人なら、尚更です。
飲み会の席で社会保険の話になると、「フリーランスって大変そうだね」と心配されるのが怖い。SNSで「老後資金が不安」とつぶやくのも気が進まない。そこから「やっぱり会社員に戻ったら?」という親切心からのアドバイスが返ってくるのが目に見えるようで。
気づけば、深夜に一人で検索を続けています。「国民年金 受取額」「フリーランス 老後資金」。スマートフォンの画面を眺めながら、不安な気持ちだけが大きくなっていく。
その孤独感は、なかなか言葉にしづらいものです。
不安の正体を分解する:個人事業主の社会保険、実際に何が違うのか

ですが、ここで一呼吸置いてみましょう。実は、「何が違うのか」を整理することだけで、漠然とした不安の輪郭がはっきりと見えてくるのです。
年金の受取額から見ると、差は明確です。厚生年金加入者(平均的な会社員)が受け取る老齢厚生年金は、月額14万円から16万円程度が一般的です。一方、国民年金だけの受取は月額6万円から6万5,000円程度。
この開きは、あなたが払い続けた保険料の額だけでなく、会社がマッチングした分の厚生年金も上乗せされる仕組みの差から生じています。フリーランスにはその会社側の負担がないのです。
さらに、日常のリスクに直結する違いもあります。会社員が病気で休職すれば傷病手当金で給料の約3分の2が保障されますが、フリーランスにはその制度がありません。働けない日数が長いほど、収入は一気にゼロになります。
出産も同じです。会社員の配偶者なら出産手当金が出ますが、個人事業主は出ません。育児休業中の給付も、フリーランスにはない制度です。
ここで重要なのは、これらの違いを「知らないから不安」なのか「知っているから不安」なのか、あなた自身が整理することです。
入金までの期間が長く、資金繰りが不安になりやすい方へ。請求書を最短即日で現金化できる仕組みもあります。
つい考えてしまう、こんなシナリオ

不安が現実味を帯びるのは、具体的なシナリオが浮かぶ時かもしれません。
「40代で大きな病気になったらどうしよう。入院した月は収入がゼロになる。取引先にも迷惑がかかる。そのまま仕事が減ったら……貯金で補えるのは半年が限度。そこから先は?」
こうして、一つの不安が連鎖します。病気のリスク→収入途絶→貯金枯渇→老後資金がない。その先の景色までが見えてしまう感覚。
あるいは、「今は仕事が続いているから何とかなっている。でも60代になったら体力が落ちるかもしれない。それでも働き続けられるか……」という、年を重ねることへの漠然とした恐怖もあります。
不安が大きくなるほど、人は動けなくなるものです。調べなくてはいけない、何か対策を打たなくてはいけない、そう思いながらも、どこから手をつけたら良いか分からず、結局は何もしない。そしてまた、夜中に不安なニュースや記事を読み漁る。そのループに陥りやすいのが、個人事業主のお金の悩みなのです。
まず不安を「見える化」することから始めてみる

では、そのループから抜け出すにはどうしたら良いでしょうか。
大事なのは、完璧な対策を一気に作ろうとしないことです。小さな一歩から始めて良いのです。
例えば、現在あなたが毎月払っている国民年金と国民健康保険の保険料をノートに書き出すだけでも、不安は形を変えます。「今、毎月いくら払っているのか」が明確になると、「その先、どう備えるか」という前向きな思考が生まれやすいのです。
その次のステップとして、「個人事業主が使える上乗せ制度」の存在を知ることも役に立ちます。iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済といった制度では、国民年金では補えない老後資金を自分で準備することができます。
保険とお金の選択肢を見直すことで、「自分にはこういう方法があるのか」という選択肢が広がります。
ここで大切なのは、「全部一気にやらなくていい」という心理的なハードルを自分で下げることです。今月は現状を把握するだけ。来月、時間があれば上乗せ制度について調べてみる。そのくらいの気持ちで十分なのです。
一人で抱え込まなくていい、次に調べるべきこと

不安を見える化した後の、次のステップも決めておくと、行動へのハードルが下がります。
一つの選択肢は、国が提供する「ねんきんネット」や「年金定期便」を活用することです。ここでは、あなた自身が65歳になった時にいくら受け取れるのか、その予測額を確認できます。「月額6万円程度」という一般的な水準ではなく、あなた自身の正確な数字が分かることで、不安はより具体的で対応可能なものに変わります。
もし、その数字を見た時に「これだけでは足りない」と感じたなら、その段階で初めて、社会保険労務士やファイナンシャルプランナーへの相談を検討しても遅くありません。
調べる順番としては、①現在の年金受取額の予測を確認する、②その金額が老後生活に足りるのか考える、③足りなければ、iDeCoや小規模企業共済など上乗せ制度を検討する、④さらに詳しく知りたければ専門家に相談する、という流れが自然です。
大切なのは、漠然とした不安のままにしておかないこと。そして、一人で全てを解決しようとしなくていいということです。調べる、相談する、そうした選択肢は、あなたの手の中にあります。
よくある質問
Q. 国民年金だけではいくら受け取れるのか、正確に知りたいです。
A. 受け取額はあなた自身の加入期間や保険料納付状況で変わります。『ねんきんネット』にアクセスするか、日本年金機構に問い合わせることで、あなたの正確な予測額が確認できます。おおよその目安は月額6万円から6万5,000円程度とされていますが、実際の数字は個人差が大きいため、まずはご自身の数字を把握することが大切です。
Q. 社会保険労務士やファイナンシャルプランナーに相談する前に、自分で調べておくことは何ですか?
A. 年金の予測受取額、現在の貯蓄額、月々の生活費の目安が分かっていると、相談がスムーズに進みます。また、iDeCoや小規模企業共済といった上乗せ制度がどのようなものかを軽く調べておくだけでも、相談時の質問が具体的になり、より実践的なアドバイスが受けやすくなります。
Q. 今から準備しても、もう手遅れではないでしょうか?
A. 個人事業主向けの上乗せ制度は、いつから始めても遅すぎることはありません。今からでも年10年でも、貯蓄できる金額は大きな差になります。また、現状を把握することで、生活を見直すきっかけも生まれます。無理のない範囲で、まずは一歩踏み出してみることが大切です。
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